ことぶき推薦図書
「ひとりと一匹」
今年いちばんの本かも知れない。発売は去年だけど。
最初のページから涙腺がゆるみました。
コリーとシベリアンハスキーの間に生まれた富士丸に向けた、飼い主の穴澤さんの手紙と言う感じなのですが、どんな飼い主も同じようなコトを考えているんだなって思いました。
自分のそばにいる動物への気持ち。
言葉で直接話せないから抱く感情。不安。
動物を飼うと言うコトは一種の儀式、約束、契約…のように思えるのです。
その動物のすべてに責任を負うと言う契約。
その動物をしあわせにすると言う約束。
その見返りは、無償の愛。
あたしの犬は16年の寿命を全うして天に召されたのですが、犬が死んだ日にあたしと犬との約束は果たされたのだと思うのです。
子犬から成犬の間は、まったくそんなコト気にせずにいたけれど、犬の毛に白髪が目立つようになって、「犬のしあわせ」についてよく考えるようになりました。
でもどんなに考えても、それはあたしの頭の中での話でしかない。答えを聞いてみたいけど、犬は言葉を喋れない。
そもそもそんなコトは望んでいないかも知れない。儀式だ約束だと感じているものは、人間の独りよがりな妄想かも知れない。
だけど、飼い犬の頭を撫でていると、「こいつって、しあわせなのかな?」と考えてしまうのです。
結局あの日、「まだまだ何かできたかも知れないのに」と後悔する気持ちでいっぱいになったけれど、あたしはしあわせにしなくてはいけないものを失って、儀式は終わったのです。
この本を読んで、犬と一緒に暮らしていた時のコトをいろいろ思い出しました。
妹が犬を拾ってきた日。
家の中でおしっこをところかまわずしまくっていた頃。
初めてテーブルに前足が届いた日。
暑すぎて水たまりに寝そべっていた夏。
側溝の網に前足がハマった時。
わざと置き去りにして、必死の形相で負い掛けてくる姿。
後ろ手に何か隠しながら近寄った時の、「ニマッ」とした顔。
寝言を言いながら足をバタバタしてるマヌケな姿。
「今、おならしたでしょ?」と言った時の知らん顔。
うなぎを食べ過ぎてブクブク太った姿。
ダイエットしてたるんだ皮膚が、風を受けてなびく様。
初めて病院へ行った時の不安そうな顔。
手当てしている間、我慢してもらす声。
最期の朝の顔。
撫でていたあの頭の形。
車に乗って走っていると、散歩中の犬と飼い主をよく見掛けます。すると無意識に、
「あの犬、しあわせそうだなぁ~」
と言ってます。楽しそうとかじゃなくて、しあわせそうだと思うんです。そう言う光景は、とってもいいのです。
なんかこう…“失った者”としては、今まさに真っ最中の人たちには、がんばって欲しいと思うのです。傍から見ていて、「しあわせそうだなぁ」と思わせて欲しい。
この本を読んで、真っ最中の人はきっと、隣りにいる動物がもっと愛おしく思えるだろうし、今はいない人は久しぶりに相棒のコトを思い出すかも知れません。これから飼いたいなと思っている人は、動物を飼う気持ちの確認をさせられるかも知れない。
とにかく、なんだかいい本なのでした。
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